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 身体拘束最小化のための指針  

 

                     

 

  1. 身体拘束最小化に関する基本的な考え方

 

 身体拘束は、患者の自由を制限し、患者の尊厳ある社会生活を阻むものである一方、安全な医療を提供するためにやむを得ず行う場合がある処置である。

当院では、患者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが拘束による身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識を持ち、緊急やむを得ない場合を除き身体拘束をしない医療・看護の提供に努める。

 

  1. 基本方針

 

1)身体拘束の定義

身体拘束とは、「衣類または綿入り帯等を使用して一時的に該当患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいう」(昭和63年 4月8日厚生労働省告示 第129号のける身体拘束の定義)

身体拘束その他、入院患者の行動を制限する具体的行為にあたるものとして、厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き」の中で挙げている行為を以下に示す。

 

 

 

  1. 一人歩きしないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  2. 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  3. 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
  4. 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
  5. 点滴、経管栄養のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
  6. 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
  7. 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
  8. 脱衣やおむつ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
  9. 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

(10)行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

(11)自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

 

 

  1. 身体拘束の原則禁止

当院は、患者または他の患者等の生命または身体を保護するために緊急やむを得ない場合を除き身体拘束の実施を禁止する。

 

  1. 緊急やむを得ず身体拘束を行う場合
  1. 緊急やむを得ず身体拘束を行う要件

患者または他の患者等の生命または身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体拘束を行う場合は、次の「3要件」をすべて満たした場合に限り、必要最低限の身体拘束を行うことができる。

 

 

緊急・やむを得ない場合の3要件

切迫性

患者本人または他の患者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと

非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替えするケアの方法がないこと

一時性

身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること

 

 

  1. 緊急やむを得ず身体拘束を行う場合の説明と同意 (身体拘束に関する同意書添付)

上記「3要件」については医師・看護師を含む多職種で検討し、医師が指示し、患者・家族等への説明と同意を得て行うことを原則とする。

 

  1. 身体拘束を行う場合は、当院の「医療安全対策マニュアル~身体拘束をせざるを得ない場合の要件と拘束を解除する基準~」に準じる。

 

4)日常ケアにおける基本方針

 身体拘束を行う必要性を感じさせないために、日常的に以下のことを取り組む。

 

  1. 患者主体の行動、尊厳を尊重する。
  2. 言葉や応対などで患者の精神的な自由を妨げない。
  3. 患者の思いをくみとり、患者の意向に添った支援を行い、多職種協働で丁寧な応対に努める。
  4. 身体拘束を誘発する原因の特定と除去に努める。
  5. 薬物療法、非薬物療法による認知症ケアやせん妄予防により、患者の危険行動を予防する。

 

5)身体拘束最小化に取り組む姿勢

  1. 患者が危険行動に至った経緯をアセスメントし、行動の背景を理解する。
  2. 身体拘束を行う必要があるか医師と看護師を含めた多職種によるカンファレンスを実施し、3要件全てに当てはまるかを複数名で評価、代替案を検討した上で可能な限り身体拘束をしなくてもよい対応を検討する。
  3. 身体拘束は一時的に行うものであり、期間を決め、患者に適した用具であるか等を評価し早期解除に向けて取り組む。

 

6)向精神薬等薬剤使用上のルール

(1) 不眠時や不穏時の薬剤指示については、医師・看護師、必要時には薬剤師と協議し,

対応する。

(2) 行動を落ち着かせるために向精神病薬を使用する場合は、医師・看護師等で協議を行い、患者に不利益が生じない量を使用する。

(3) 生命維持装置装着中や検査等、鎮静を行う場合は、薬剤の必要性と効果を評価し、必要な深度を超えない適正な量を使用する。

 

7)身体拘束等禁止の対象とはしない具体的な行為

  1. 整形外科疾患の治療であるシーネ固定等
  2. 乳幼児及び重症心身障がい児(者)への事故防止対策

①転倒防止のためのサークルベッド

②点滴時のシーネ固定

  1. 立位や歩行が不安定な患者の転倒や離棟を予防することを目的とした離床センサーの使用。行動制限を行うために使用する場合は対象外とする。

 

  1. 身体拘束最小化のための体制

 

1)身体拘束最小化チームの設置

院内に身体拘束最小化対策に関わる「身体拘束最小化チーム」を設置する。

 

  1. チームの構成

医師、看護師、薬剤師、リハスタッフ、医療安全管理者、事務部門 (別表1)

 

  1. チームの役割

①身体拘束の実施状況を把握し、管理者を含む職員に定期的に周知する(1回/3か月)

②定期的なラウンドを行い、身体拘束実施事例の最小化に向けた医療・ケアを検討する(月1回)

③各部署からの相談については、迅速に対応し適切な助言を行う。

④定期的に本指針・マニュアルを見直し、職員へ周知して適切な助言を行う。

⑤チームで検討した内容等については記録し、保存する。

⑥身体拘束最小化のための職員研修を開催し記録する(年1回以上)

 

  1. 身体拘束最小化のための職員研修

 

医療・ケアに携わる職員に対して、身体拘束最小化のために研修を実施する

 

  1. 定期的な教育研修(年1回以上)の実施。
  2. その他、必要な教育・研修の実施および実施内容の記録

 

 

  1. 身体拘束を行う場合の対応

 

 患者等の生命または身体を保護するための措置として、緊急やむを得ず身体拘束を行わなければならない場合は、以下の手順に従って実施する。

 

1)記録、集計、分析、評価を専用の様式を用いて、その応対及び時間・日々の心身の状態等の観察を記録する。

2) 緊急やむを得ず身体拘束をせざるを得ない状態であるかどうかを医師と看護師を含む多

職種によるカンファレンスで検討する。必要と認めた場合、医師は身体拘束の指示をす

る。

3) 医師は同意書を作成し、事前に患者・家族等に説明して身体拘束開始の同意を得る。た

だし、直ちに身体拘束を要する切迫した状況で事前に同意を得ることが困難な場合は、

身体拘束開始後、直ちに家族等に説明して同意を得る。

 

説明内容 (1)身体拘束を必要とする理由

(2)身体拘束の具体的方法・理由

(3)身体拘束を行う時間または時間帯・期間

(4)身体拘束による合併症

(5)改善に向けた取り組み方法

 

4) 患者・家族の同意を得られない場合は、身体拘束をしないことで起こり得る不利益や危

険性を説明し、診療録に記載する。

5) 身体拘束中は、身体拘束の様態および時間、その際の患者の心身の状態並びに緊急やむ

を得ない理由を記録する。

6) 身体拘束中は毎日、身体拘束の早期解除に向けて多職種によるカンファレンスを実施す

る。カンファレンスでは、やむを得ず身体拘束を行う「3要件」を踏まえ、継続の必要

性を評価する。また、身体拘束を解除するための対策を検討する。

7) 医師はカンファレンスの内容を踏まえて身体拘束の継続または解除の有無を指示する。

   身体拘束を継続する必要がなくなった場合は、速やかに身体拘束を解除する。

 

6. この指針の閲覧について

 

  本指針は、当院職員が閲覧可能とするほか、岩内協会病院ホームページに掲載し、いつでも患者・家族および地域の住民等が閲覧できるようにする。

 

 

(附則) この指針は2025年5月20日より施行する。